介護保険2割負担の対象拡大で介護事業所がやるべき7つの準備|最大35万人が負担増、2026年度中に結論【大阪の介護コンサル】
株式会社Ne-worth(ニューワース)代表取締役の森中 洋です。大阪府茨木市にて介護業界専門の稼働率向上/人材確保/人材育成/経営改善のコンサルを生業としております。介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、サ高住、訪問介護、訪問看護、どのサービス種別でも対応しております。現在は大阪・奈良・兵庫・京都にて15法人のコンサル・顧問活動に携わっております。お読みいただいた方に少しでも有益な情報をお伝えしたく、経験則に基づいた内容をブログにまとめております。よかったらぜひご覧ください😁
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この記事でわかること
▶ 2割負担の対象拡大が「まだ決まっていない」現在地と、結論のタイムリミット
▶ 厚労省が示した4つの所得基準案と、2つの配慮措置の中身
▶ 2割負担と同時に進む補足給付の見直し(一部は令和8年度から実施の方向)
▶ 利用控えが事業所の稼働率・売上に及ぼす影響の構造
▶ 介護事業所が今すぐ着手すべき7つの準備
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結論:2割負担の拡大は「見送り」ではなく「先送り」。決着は2026年度中です
まず、正確な現在地からお伝えします。
介護保険の2割負担の対象拡大は、令和7年12月25日にとりまとめられた社会保障審議会介護保険部会の意見において、具体的な所得基準の結論には至りませんでした。意見書では、能力に応じた負担と、現役世代を含めた保険料負担の上昇を抑える観点から見直しを検討する必要があるとしたうえで、部会で継続検討し、第10期介護保険事業計画期間の開始(令和9年度〜)の前までに結論を得ることが適当とされています。
出典:社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和7年12月25日)
そして令和8年7月21日に閣議決定された骨太方針2026では、介護保険の「2割負担の判断基準」の見直しについて、2026年度中に結論を得ると明記されました。
出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日閣議決定)
📌 つまり、「見送られた」のではなく「先送りされた」のです。そして先送りの期限は、もう目の前に迫っています。
さらに押さえておくべきは、利用者負担の見直しは2割負担だけではないという点です。施設・ショートステイに関わる補足給付(特定入所者介護サービス費)の見直しは、すでに方向性が固まり、一部は令和8年度から実施される方向です。本記事では、この2つを併せて整理します。
「まだ決まっていないなら様子見でいい」——これは最も危険な判断です。決定から施行までの期間は短く、決まってから動く事業所は必ず後手に回ります。今ならまだ間に合います。
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🔴 まず現状の確認|2割・3割負担の判断基準と実際の対象者数
現行の利用者負担割合は、「本人の合計所得金額」と「世帯の年金収入等」の2つの要件で判定されます。

▶ 第2号被保険者(40〜64歳)、市町村民税非課税者、生活保護受給者は、上記にかかわらず1割負担です。
▶ 負担割合証の有効期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間で、毎年7月頃に交付されます。
2割負担は平成26年の介護保険法改正により平成27年8月から、3割負担は平成29年の改正により平成30年8月から施行されました。介護保険制度は、すでに2度の利用者負担引き上げを経験しているということです。
そして、実際の対象者数がこちらです。
📌 令和7年3月現在のサービス利用者5,406,760人のうち ▶ 2割負担に該当:約4.3%(234,062人)
▶ 3割負担に該当:約3.9%(206,341人)
出典:社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和7年12月25日)
つまり、サービス利用者の9割以上が1割負担です。この構造が変われば、影響は全国の事業所に及びます。
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厚労省が示した4つの所得基準案|上位20%から30%へ
介護保険部会では、現行の「単身280万円以上(2人以上世帯346万円以上)」という範囲を広げる機械的な選択肢として、被保険者の上位約25%から約30%に相当する、単身260万円から230万円まで(夫婦世帯は326万円から296万円まで)の基準が提示され、財政影響や対象世帯への影響等の資料を基に議論が行われました。
📌 提示された4つの案と、新たに2割負担となる人数の試算

出典:金額の範囲は前掲「介護保険制度の見直しに関する意見」。各案の金額と人数の試算は第130回社会保障審議会介護保険部会資料(令和7年12月1日)に基づく報道による
▶ 繰り返しますが、これらは議論のために示された機械的な選択肢であり、決定事項ではありません。最終的にどの水準とするか、そもそも見直しを行うかどうかは、今後の部会での継続検討と政治判断に委ねられています。
ただし、方向性としての「拡大」はすでに骨太方針に位置づけられています。事業所としては、拡大を前提に備えるのが現実的な経営判断です。
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🔴 見落としてはいけない「配慮措置」の中身
対象拡大とセットで、急激な負担増を抑える配慮措置が2つ議論されています。ここが事業所の実務にとって最重要ポイントです。
配慮措置① 負担増の上限を月7,000円に設定する案
新たに2割負担になる利用者の負担増加額について、当分の間、上限を設ける案です。
▶ 意見書では、一月分の1割負担の場合と比べた負担増が最大となる場合(月22,200円)の約3分の1である、月7,000円に抑えるとされています。後期高齢者医療制度に2割負担が導入された際に負担増加額の上限が設けられたことを参考にした案です。
ただし部会では、見直しに慎重な立場から「上限を付けても負担は重く、当分の間が終われば負担の上昇が大きい」という意見も出されています。ここは利用者への説明で必ず問われる点です。
配慮措置② 預貯金等が一定額以下なら申請により1割据置
所得基準では2割負担になる方でも、預貯金等の額が一定額以下の場合、申請により1割負担に戻す案です。部会では次の3パターンが提示されました。

出典:社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和7年12月25日)
▶ 預貯金等の確認方法については、自己申告を基本とした上で、不正な申告が検知された場合の加算金を設けるとともに、市町村が必要に応じて金融機関への照会を実施することで、申告の適正性の確保を図る方向が示されています。あわせて、補足給付の事務も含めた事務負担の軽減が論点とされ、保険者や関係者の意見を聞いて更に検討することとされています。
ここが落とし穴|配慮措置②は「申請主義」です
📌 補足給付をご経験の方ならすぐお分かりいただけると思いますが、申請主義の制度は必ず申請漏れが起きます。
制度を知らない利用者・家族は、申請すれば1割で済むはずが2割を払い続けることになります。そして、その負担増が利用控えを生み、事業所の稼働率を押し下げます。
つまり——事業所が正しく案内できるかどうかで、利用者の負担額も、自法人の売上も変わるということです。これは単なる親切ではなく、経営の話です。
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🔴 施設・ショート事業者は必見|補足給付の見直しは方向性が固まっています
2割負担の議論に隠れがちですが、補足給付(特定入所者介護サービス費)の見直しは、部会でおおむね意見の一致を見ています。こちらは2割負担と違い、実施時期まで示されています。
📌 意見書に示された見直しの内容 ▶ 第3段階②の負担限度額について、能力に応じた負担とする観点から上乗せを行う
▶ 第3段階①を「本人年金収入等80万円超100万円以下」(①ア)と「100万円超120万円以下」(①イ)に区分
▶ 第3段階②を「120万円超140万円以下」(②ア)と「140万円超」(②イ)に区分
▶ このうち第3段階①イおよび②イの負担限度額について上乗せを行う
▶ 各段階の年金収入等と食費・居住費、利用者負担等との差額の差の均衡を図る範囲で上乗せ
📌 施行時期 ▶ 原則:第10期介護保険事業計画期間(令和9年度〜)から実施
▶ ただし区分の細分化を伴わない見直しについては、令和8年度から実施することが適当とされています
出典:社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和7年12月25日)
特養・老健・介護医療院・ショートステイを運営されている法人にとって、これは2割負担よりも先に来る実務課題です。負担限度額認定証の区分が細分化されれば、入所者ごとの食費・居住費の設定、契約書・重要事項説明書の記載、請求処理のすべてに影響します。
なお、多床室の室料負担については、令和7年8月より「その他型」「療養型」の介護老人保健施設および「Ⅱ型」の介護医療院で新たに室料負担が導入されたところですが、意見書では、在宅との負担の公平性や各施設の機能・利用実態等を踏まえ、介護給付費分科会で更なる在り方の検討を行う必要があるとされています。老健を運営されている法人は、この議論も追っておくべきです。
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介護事業所が今すぐやるべき7つの準備
ここからが本題です。制度の解説だけでは経営は変わりません。今日から着手できる準備を7つに整理しました。
▶ 準備1:自法人の利用者の負担割合構成を「数字」で把握する
まず現状把握です。次の数字を出してください。
📌 把握すべき数字
利用者総数に対する1割/2割/3割の人数と構成比
サービス種別ごと(訪問・通所・入所)の負担割合構成比
2割・3割負担者の平均利用単位数と、1割負担者との差
全国平均では2割が約4.3%、3割が約3.9%です。自法人がこれと比べて高いのか低いのかで、今回の見直しの影響度はまったく変わります。
根性論・感覚論ではなく、数字で動く。ここが出発点です。
▶ 準備2:負担が2倍になった場合の影響シミュレーションを行う
次に、影響額の試算です。1割負担者のうち、区分支給限度基準額を高い割合で使っている利用者が最も影響を受けます。
📌 シミュレーションの手順
1割負担者を「限度額の使用率」順に並べる
使用率が高い順に、自己負担額が2倍になった場合の月額を算出する
配慮措置(月7,000円上限)が適用された場合の月額も併記する
「利用回数を減らす可能性が高い層」をリスト化する
意見書でも、1割から2割になった場合の負担増は最大で月22,200円と示されています。配慮措置があっても、当分の間が終われば負担は本来の水準に向かって上がっていきます。
このリストが、後述する説明体制と営業戦略の土台になります。
▶ 準備3:ケアマネジャー・相談員の「説明力」を整える
制度が変わったとき、利用者・家族が最初に相談するのは行政ではなく、目の前のケアマネジャーと相談員です。
📌 整えるべきもの
負担割合の判断基準を平易に説明できる資料(1枚もの)
配慮措置②(預貯金による1割据置)の申請案内の手順書
「利用を減らしたい」と言われたときの代替提案パターン集
家族向けの想定問答(Q&A形式)
特に配慮措置②の申請案内は、事業所の姿勢が問われる部分です。申請すれば1割のままでいられる方に、そのことを伝えられない事業所であってはなりません。信頼の問題であり、同時に稼働率を守る実務でもあります。
なお、骨太方針2026では医療保険についても、70歳以上の高齢者の窓口負担割合の見直しに向けた改革工程表を2026年末までに策定するとされています。部会でも「高齢者に対して医療と介護の双方で負担増を求めることは影響が大きい」との意見が出ています。医療と介護の負担増が同時に来る前提で、家族への説明を組み立てておく必要があります。
▶ 準備4:補足給付の見直しに備え、事務フローを点検する
施設系・ショートステイを運営されている法人は、こちらが先に来ます。
📌 点検すべき項目
負担限度額認定証の区分ごとの入所者数の把握
食費・居住費の設定と契約書・重要事項説明書の記載内容
区分変更が生じた場合の請求処理と利用者説明の手順
認定証の更新時期を管理する仕組み(誰が・いつ・どう確認するか)
区分の細分化を伴わない見直しは令和8年度から実施される方向です。「まだ先の話」ではありません。
▶ 準備5:「削られないサービス」になるための価値を明確にする
負担が増えたとき、利用者は必ずサービスを選別します。そのとき最初に削られるのは、**「なぜ利用しているのか説明できないサービス」**です。
📌 見直すべき視点
自事業所のサービスが、利用者の生活課題のどこに効いているか説明できるか
通所であれば、個別機能訓練やリハビリの成果を可視化できているか
訪問であれば、自立支援・重度化防止にどう寄与しているか記録できているか
区分支給限度基準額に対する自社給付率を把握できているか
ここは、日頃から私が顧問先にお伝えしている「ウリの創設」そのものです。負担増という外部環境の変化は、ウリのある事業所とない事業所を容赦なく選別します。
Ne-worthの支援先では、住宅型有料老人ホーム(大阪・50名)で給付率の見直しにより月120,000単位の改善を実現しています。これは机上の空論ではありません。限度額と給付の設計を数字で管理できているかどうかで、結果は明確に分かれます。
▶ 準備6:営業力を高める|利用控えの目減りは新規でしか埋まりません
ここが、今回最もお伝えしたい準備です。
負担が増えれば、利用者はサービスの回数を見直します。介護保険部会でも、見直しに慎重な立場から「介護は医療と比べ、利用期間が長いため、利用者負担の増加は利用控えを招き、結果として重度化を招くのではないか」という意見が出されています。
週3回のデイが週2回に、月8回の訪問が月6回に——一人あたりの減少幅は小さく見えても、事業所全体では大きな売上減になります。
そして重要なのは、この目減りは既存利用者を守るだけでは埋まらないという事実です。
🔴 負のループの構造 稼働率↓ → 売上↓ → 処遇改善の原資↓ → 給与↓ → 離職 → 人員不足で受入制限 → 稼働率↓
このループに入ると、抜け出すのは容易ではありません。断ち切る手段はただひとつ、新規の獲得です。
営業は「量」ではなく「質」
ここで多くの事業所が誤解します。「営業を強化する=訪問件数を増やす」ではありません。
📌 Ne-worthの支援データ(年間1万件以上の施設訪問実績より)

▶ 訪問件数と問い合わせ率は比例しません。訪問件数が3分の1以下の事業所Cが、問い合わせ率では2倍以上を叩き出しています。
差を生むのは「ウリ」です。準備5で明確にした価値を、ケアマネジャー・MSW・地域包括支援センターに正確に伝えられるかどうか。ここが営業力の正体です。
実績が示すこと
📌 Ne-worthの支援実績(すべて事実です。エビデンスもございます)
介護老人保健施設 悠々の郷:1ヵ月で16名入所、1ヵ月半で稼働率23.7%UP
大阪市の老健:入所84%→98%(2ヵ月)、通所58%→94%(6ヵ月)
デイサービス(大阪・30名):稼働率85%→3ヵ月で96%
社会福祉法人仁風会:デイ6拠点で稼働率15〜20%UP・前年比売上5,000万UP
訪問介護:1ヵ月で売上100万UP
負担増そのものは、事業所の努力では止められません。しかし、新規の獲得は事業所の努力で変えられます。営業は「生き残っていくために必要」なのです。
▶ 準備7:制度情報を追う「担当者」を決める
最後に、これが意外と抜けています。
2割負担の見直しは2026年度中に結論、第10期介護保険事業計画(令和9年度〜)に反映される見込みです。同時期には2027年度の介護報酬改定も控えています。
📌 決めておくこと
社会保障審議会介護保険部会の資料を定期的に確認する担当者
情報を法人内で共有する場(管理者会議等)と頻度
決定時に動く体制(誰が事務変更を主導し、誰が利用者へ案内するか)
「そのうち通知が来るだろう」では遅いのです。通知が来てから動く事業所と、案の段階から準備している事業所とでは、対応の質もスピードもまったく違います。
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まとめ|負担増は「制度の話」ではなく「経営の話」です
📌 制度の現在地 ✅ 2割負担の対象拡大は令和7年12月のとりまとめでは結論に至らず、令和9年度の前までに結論を得ることとされた
✅ 骨太方針2026で、2026年度中に結論と明記。先送りの期限は目前
✅ 厚労省は単身230万〜260万円の4案を提示、最大で約35万人が新たに対象となる試算
✅ 配慮措置は月7,000円上限案と預貯金による1割据置案。後者は申請主義で申請漏れリスクあり
✅ 補足給付の見直しは方向性が固まり、一部は令和8年度から実施の方向
📌 事業所がやるべき7つの準備
▶ 1. 負担割合構成の把握
▶ 2. 影響シミュレーション
▶ 3. 説明体制の整備
▶ 4. 補足給付への事務対応
▶ 5. ウリの明確化
🔴 6. 営業力の向上
▶ 7. 情報追跡
負担割合が変わるのは利用者です。しかし、その結果として利用控えが起き、稼働率が下がり、売上が減り、処遇改善の原資が細り、職員が離れていく——この負のループを被るのは事業所です。
うわべだけの数字改善に意味はありません。ウリを磨き、それを届ける営業力を持つ。この両輪だけが、負担増の時代を生き抜く手段です。今やらない理由がありません。
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「うちの利用者の負担割合構成、実は把握できていない」 「限度額の使用率と給付率を数字で出したことがない」 「営業に行っているが、問い合わせにつながらない」
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株式会社Ne-worth(ニューワース) 代表取締役 森中 洋(もりなか よう) 社会福祉士 / 老健・特養・地域密着型特養にて支援相談員・企画広報部長・事務長を歴任後、独立。現在15法人のコンサル・顧問に従事。
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