介護老人保健施設の稼働率の上げ方|1ヵ月で23.4%改善させた、その方法の1つを解説【大阪の介護コンサル】
株式会社Ne-worth(ニューワース)代表取締役の森中 洋です。大阪府茨木市にて介護業界専門の稼働率向上/人材確保/人材育成/経営改善のコンサルを生業としております。介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、サ高住、訪問介護、訪問看護、どのサービス種別でも対応しております。現在は大阪・奈良・兵庫・京都にて15法人のコンサル・顧問活動に携わっております。お読みいただいた方に少しでも有益な情報をお伝えしたく、経験則に基づいた内容をブログにまとめております。よかったらぜひご覧ください😁
この記事でわかること
▶ 老健の稼働率が上がらない構造的な理由
▶ 「薬価の上限基準」がなぜ入所を阻んでいるのか
▶ 上限基準の撤廃で1ヵ月に16名の入所を実現した実例
▶ 看護師と管理医師の反対をどう突破するか(実務編)
▶ 在宅復帰指標と両立させながら稼働率を維持する方法
はじめに:4年半前の記事を、最新情報で書き直します
この記事は、2022年3月に公開した同名記事の全面改訂版です。
当時お伝えした「薬価の上限基準を撤廃する」という手法は、いまも老健の稼働率改善において最も即効性のある一手です。むしろ経営環境が厳しくなった2026年現在、その重要性は増しています。
今回は最新の公的データを加え、さらに前回「別の機会に」としていた看護師と管理医師の反対をどう突破するかまで踏み込んで解説します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 まず現実を見てください——老健の30.5%が赤字です
福祉医療機構(WAM)の2024年度調査によると、老健の経営状況は以下のとおりです。
▶ 赤字施設の割合:全体の30.5%
▶ 基本型に限ると:36.4%
▶ 超強化型では:25.6%
2024年度の介護報酬改定により収益は増加したものの、人件費・経費も増加したため事業利益率は横ばい。コロナ流行以前の水準には戻っていません。
そして最も重要な指摘がこれです。
黒字施設と赤字施設では、1施設あたりの事業収益に40百万円以上の差があり、赤字施設は入所・通所ともに利用率・利用者単価が低い。入所利用率と事業利益率は、ほぼ同じ推移を示しています。
つまり——
老健の経営は、稼働率でほぼ決まります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 結論:稼働率を上げる即効薬は「薬価の上限基準の撤廃」です
早速、結論からお伝えします。
老健の稼働率を最短で改善する方法は、「薬価の上限基準」を撤廃することです。
介護保険上、老健は原則として入所を断ってはいけないとされています。しかし現実は違います。入所するには様々なハードルをクリアしなければならず、そのハードルの一つが「薬価の上限基準」です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 なぜ老健には「薬価の上限基準」があるのか
▶ 施設種別によって薬代の負担先が違う
ここが老健特有の構造です。
老健 → 薬代は施設負担
特養・介護付有料・住宅型有料・サ高住 → 薬代は利用者・家族負担
特養や有料老人ホームは、外部の病院を受診して薬を受け取ります。協力病院の医師や嘱託医が処方箋を出し、提携薬局から薬が出される。この薬代は利用者様・ご家族が負担します。
一方、老健は包括報酬であるため、入所後の薬代は施設が負担します。
▶ その結果、何が起きるか
薬を多く飲んでいる方、薬価の高い薬を飲んでいる方が入所すると、施設の持ち出しが増えて利益が減ります。
そこで法人・経営者は「利益を減らしたくない」という判断から、薬価に上限基準を設けて入所者を選別するわけです。
施設ごとに基準は異なりますが、一般的には利用者1名につき1ヵ月10,000円程度を上限としているところが多く見られます。
▶ 薬価10,000円を超える方 → 入所不可
▶ 薬価10,000円以内の方 → 入所可
この基準が、入所の門を狭めています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 実績:この一手だけで1ヵ月に16名入所・稼働率23.4%改善
弊社が支援した老健では、「薬価の上限基準を撤廃する」という施策の実行だけで、1ヵ月に16名の入所を実現しました。
稼働率にして、1ヵ月で23.4%の改善です。
なぜこれほどの効果が出るのか。答えは単純です。
空床にしているより、薬価の高い方でも入所していただいたほうが、確実に法人の収益はプラスになるからです。
薬価が高いといっても、1ヵ月で100,000円を超えるケースは稀です。仮に薬価が100,000円かかったとしても、老健の入所報酬を考えれば利益は出ます。
単純な引き算の話です。しかし、これがなかなか実行できない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 なぜ実行できないのか——2つの壁とその突破法
上限基準の撤廃を阻む要因は、大きく2つあります。前回の記事で「別の機会に」とお伝えした部分を、ここで解説します。
▶ 壁① 看護師の抵抗
なぜ抵抗が起きるのか
薬剤管理は看護師の業務です。服薬数が増えれば、配薬・与薬・記録の負担が直接的に増えます。医療的リスクへの懸念も当然あります。「なぜわざわざ手のかかる方を入れるのか」という感情は、業務を担う立場として自然なものです。
突破するために必要なこと
✅ 業務負担の実数を示す
「薬が増える」と漠然と語るのではなく、対象者が何名増え、配薬回数が何回増えるのかを具体的に示します。実際に試算すると、想像より小さいケースがほとんどです。
✅ 薬剤管理の仕組みを先に整える
一包化の徹底、配薬車の見直し、薬剤師との連携強化。受け入れ前に業務設計を済ませることで、抵抗の理由そのものを減らします。
✅ 稼働率と給与の関係を共有する
これが最も効きます。稼働率が上がれば介護報酬総額が増え、処遇改善加算の入金額も増える。それは職員自身の給与に直結します。「なぜやるのか」が腹落ちすれば、現場は動きます。
▶ 壁② 管理医師(施設長)の理解
なぜ抵抗が起きるのか
薬剤費が増えることへの懸念に加え、「うちの施設で診られる範囲か」という医療的判断があります。また、減薬の方針を持つ医師の場合、多剤服用者の受け入れに慎重になるケースもあります。
突破するために必要なこと
✅ 収支シミュレーションを数字で提示する
薬剤費の増加見込みと、入所増による収益増を並べて提示します。感覚論ではなく、引き算の結果を見せることが唯一の説得材料です。
✅ 減薬という強みに転換する
ここが重要な発想転換です。老健には医師・看護師・薬剤師が配置されており、多剤服用者の減薬に取り組める体制があります。入所時に薬価が高くても、適切な処方見直しによって薬剤費は抑制できます。
そしてこれは、「多剤服用の方でも受けられる老健」という強力なウリになります。在宅や病院からの紹介が集まりやすくなり、稼働率の改善が加速します。
✅ 在宅復帰と絡めて説明する
薬剤費は入所期間中の負担です。在宅復帰を適切に進めれば、長期的なコスト増は抑制できます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 在宅復帰指標との両立をどう考えるか
「薬価の高い方=医療依存度が高い方を受け入れると、在宅復帰率が下がるのでは」
こう懸念される方も多いはずです。ここは正確に整理しておきます。
WAMの調査でも、超強化型の赤字施設割合は25.6%と、基本型の36.4%より大幅に低いことが示されています。上位類型ほど入所利用者単価の増加幅が大きく、経営は安定します。類型を落としてまで稼働率を追うのは本末転倒です。
ですから、正しい進め方はこうです。
✅ 薬価基準の撤廃は「受入間口を広げる施策」として実行する
✅ 同時に、在宅復帰・在宅療養支援等指標の各項目を数値で管理する
✅ 退所前後訪問指導、支援相談員配置、リハ専門職配置などの取得可能な項目を積み上げる
✅ 訪問リハ・通所リハの利用者確保にも並行して取り組む
間口を広げて稼働を確保しつつ、指標も維持する。両立は可能です。
実際、弊社が支援している奈良県の老健では、単独型で超強化型を維持しながら稼働率96〜97%を実現しています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 稼働率向上が「給与」に直結する理由
そしてもう一つ、2022年当時より重要度が増しているポイントがあります。
稼働率は、職員の給与に直結します。
処遇改善加算は、2024年6月に介護職員等処遇改善加算へ一本化されました。そして令和8年度の介護報酬改定率+2.03%のうち、+1.95%が処遇改善関連です。
制度は「賃上げの原資は増やすが、事業運営の原資は増やさない」方向へ進んでいます。加算への依存度が上がるということは、稼働率の差がそのまま給与の差になるということです。
▶ 稼働率が上がる → 介護報酬総額が増える → 処遇改善加算の入金額が増える → 給与に還元できる
▶ 稼働率が下がる → 介護報酬総額が減る → 処遇改善加算の入金額が減る → 給与で競合に負ける
2025年度介護労働実態調査では、人材不足を訴える事業所は65.8%。そして採用に最も効果があった方策は「賃金水準の向上」(38.4%)でした。
稼働率を上げることは、採用力を上げることと同義です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔴 撤廃だけでは足りません——同時に営業を
最後に、4年半前の記事からアップデートした部分をお伝えします。
薬価基準の撤廃は「受け入れられる体制をつくる」施策です。しかし、それだけでは依頼は来ません。
撤廃したことを地域に知らせなければ、意味がないのです。
✅ 居宅介護支援事業所・地域包括支援センターへの訪問営業
✅ 病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)への周知
✅ 「多剤服用の方も受けられます」という明確なウリの発信
弊社のデータでは、訪問件数が最多の事業所(1,049件)の問い合わせ率が9%にとどまる一方、訪問件数が最少の事業所(300件)が問い合わせ率21%を記録しています。件数ではなく、伝える中身で決まります。
「受け入れ体制の構築」と「営業による発信」。この2つが揃って初めて、稼働率は動きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まとめ:非常識な結果を出すには、非常識なことを
老健の稼働率改善において、「薬価の上限基準」は業界のアンタッチャブルな領域です。しかし、ここに手を入れることで劇的な変化が起きます。
✅ 老健の30.5%が赤字。入所利用率と事業利益率はほぼ同じ推移
✅ 老健は包括報酬のため薬代が施設負担——これが上限基準を生んでいる
✅ 上限撤廃だけで1ヵ月16名入所・稼働率23.4%改善の実績
✅ 壁は「看護師の抵抗」と「管理医師の理解」——数字と仕組みで突破できる
✅ 多剤服用者の受け入れは、減薬体制を持つ老健の強力なウリになる
✅ 撤廃と同時に営業で発信しなければ依頼は来ない
非常識な結果を出すには、非常識なことをしなければいけません。
もちろん一時的に薬剤費は増えます。しかし在宅復帰と絡めれば抑制でき、何より空床のまま放置するより確実に収益は改善します。
2027年度は介護報酬改定と制度改正が重なるダブル改定です。経営環境がさらに厳しくなる前に、稼働率の改善に着手してください。
「稼働率が上がらない」「薬価基準の撤廃を提案したいが社内を説得できない」「営業のやり方がわからない」——そのような課題を抱えている法人は、ぜひ一度ご相談ください。初回相談は無料です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
無料相談受付中
株式会社Ne-worth(ニューワース)
代表取締役 森中 洋(もりなか よう)
社会福祉士 / 老健・特養・地域密着型特養にて支援相談員・企画広報部長・事務長を歴任後、独立。現在15法人のコンサル・顧問に従事。
対応施設種別:介護老人保健施設・特養・住宅型有料老人ホーム・グループホーム・サービス付き高齢者向け住宅・訪問介護・訪問看護・障がい事業(共同生活援助・就労継続支援B型)
📧 メール:morinakayou0028@gmail.com
📞 TEL:080-3818-4194(受付:月〜金 9時〜18時)
🌐 無料相談:24時間受付中
🗾 対応エリア:大阪・奈良・兵庫・京都・滋賀(オンライン相談は全国対応)





