介護老人保健施設の稼働率の上げ方②|1ヵ月で23.4%改善させた、その方法の1つを解説【大阪の介護コンサル】
この記事でわかること
▶ 入所判定会議が稼働率を阻害している2つの理由
▶ 会議の開催頻度が生む「機会損失」の実態
▶ 介護保険上、入所判定会議は必須なのか(法的整理)
▶ 定期判定会議との明確な違い
▶ 撤廃後、誰がどう判断するのか——支援相談員への権限移譲
はじめに:4年半前の記事を、最新情報で書き直します
この記事は、2022年3月に公開した同名記事の全面改訂版です。
前回の記事では「薬価の上限基準の撤廃」をお伝えしました。今回はその第二弾、「入所判定会議の撤廃」です。
この2つが実行できれば、稼働率は確実に上がります。それも少しではなく、劇的に上がります。
4年半が経ち、経営環境はさらに厳しくなりました。最新の公的データを加え、前回よりも踏み込んで解説します。
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🔴 まず現実を——老健の30.5%が赤字です
福祉医療機構(WAM)の2024年度調査によると、老健の赤字施設割合は以下のとおりです。
▶ 全体:30.5%
▶ 基本型:36.4%
▶ 超強化型:25.6%
そして最も重要な指摘がこれです。黒字施設と赤字施設では1施設あたりの事業収益に40百万円以上の差があり、赤字施設は入所・通所ともに利用率が低い。入所利用率と事業利益率は、ほぼ同じ推移を示しています。
老健の経営は、稼働率でほぼ決まります。
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🔴 入所判定会議とは何か
老健に入所するためには、通常「入所判定会議」を通過しなければなりません。
利用者様の情報を上げ、医師・介護職員・看護職員・機能訓練指導員・管理栄養士・支援相談員・介護支援専門員などが、その方の入所可否を話し合う会議です。前回お伝えした薬価についても、この場で審議されます。
そして断言します。
この「入所判定会議」が、スムーズな入所を阻害し、稼働率の向上を妨げています。
理由は2つあります。
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🔴 阻害要因① 開催頻度が退院日に間に合わない
まず、開催頻度の問題です。
週1回開催の老健、週2回開催の老健とばらつきはありますが、多くは週1〜2回です。
開催頻度が少ないため、申し込みから入所決定までに時間がかかります。
ここで決定的に重要な事実があります。
老健への申し込みの約7〜8割は、病院からのケースです。
急性期に入院している方には退院予定日があり、その日程を大きく後ろにずらすことはできません。入所判定会議の結果を悠長に待てないのです。
結果どうなるか。
すぐに受けてくれる他施設をあたることになり、申し込みいただいた貴重なケースが他法人・他施設に流れます。
これがどれだけの機会損失になっているか。週1回開催なら、最大で6日間の空白が生じます。その6日で、ケースは他所に決まります。
▶ リードタイムは営業の生命線です
弊社が営業支援でクライアント法人の数値を分析する際、必ず追う指標の一つがリードタイム(問い合わせから入所までの日数)です。
このリードタイムが短い施設ほど、紹介元から選ばれます。理由は単純で、MSWやケアマネジャーは「早く確実に決まる施設」に紹介したいからです。
入所判定会議の存在は、このリードタイムを構造的に長くしています。
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🔴 阻害要因② 会議の「あり方」そのものの問題
もう一つは、会議の質の問題です。
入所判定会議は、良い会議と悪い会議に明確に分かれます。
▶ 【良い会議】
「どうやったら受け入れることができるか」「入所していただくにはどうすればよいか」という前提でスタートする会議
▶ 【悪い会議】
ただ単に、今ある利用者様の情報をもとに振るいにかけるという前提でスタートする会議
そして残念ながら、大多数が【悪い会議】です。
その結果、以下のような方々は情報のみで入所不可の判定になります。
▶ 認知症の周辺症状が強い方
▶ 薬価の高い方
▶ 重度の方
▶ 医療ニーズの高い方
申し込みいただいた貴重なケースを、自ら手放しているのです。
▶ さらに深刻な「二次被害」があります
断られたケースを紹介した病院・居宅介護支援事業所・地域包括支援センターは、そこで線を引きます。
「この老健は、このレベルの利用者様は受け入れてくれない」
一度こう認識されると、それ以降の紹介件数そのものが減ります。
これは単発の機会損失ではありません。紹介ルートが細るという、継続的な損失です。
弊社のデータでも、転換率が低い事業所の共通点として「受入条件が狭く、問い合わせが発生しても断らざるを得ないケースが生じている」ことが挙げられています。断り続ける施設には、そもそも問い合わせが来なくなります。
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🔴 法的整理:入所判定会議は必須なのか
ここが最も重要なポイントです。
介護保険上、「入所判定会議」は必ず実施しなければならないのか?
答えは「NO」です。
厳密に言えば、誰でも受け入れをするなら「入所判定会議」は開催しなくてよい。する必要がない、ということです。
弊社が支援した施設では、実際の運営指導(旧・実地指導)で何度もクリアしています。ご安心ください。
▶ よくある混同:定期判定会議との違い
ここは絶対に間違えてはいけない部分です。
▶ 入所判定会議
誰でも受け入れをするなら、開催しなくてよい
▶ 定期判定会議
3ヵ月に1回は必ず開催
この2つを混同している施設が非常に多いです。「判定会議は必須だ」という思い込みの正体は、たいていこの混同です。
明確に区別してください。
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🔴 撤廃後、誰が入所可否を判断するのか
「会議をなくしたら、誰が決めるのか」
当然の疑問です。答えは明確です。
「支援相談員」です。
支援相談員が、以下の視点を総合的に加味して判断します。
✅ 利用者様のADL
✅ 医療情報
✅ 家族構成・ご家族様の意向
✅ 緊急性の高さ
✅ 地域の病院・居宅との連携状況
✅ 現在の入所者構成とのバランス
これは、長年さまざまな介護施設で立て直しを行い、稼働率を上げてきた私の結論です。
▶ ただし、支援相談員の能力が問われます
権限を移譲する以上、支援相談員には相応の力量が求められます。
▶ 聞き取る能力:紹介元から必要な情報を過不足なく引き出す
▶ 見抜く能力:書面情報の裏にあるリスクと可能性を読む
▶ 医療の知識:疾患・処方・医療処置を理解し、受入可否を判断する
▶ 交渉力:現場の看護・介護と調整し、受け入れ体制を作る
つまり「入所判定会議の撤廃」は、支援相談員の育成とセットで進める施策です。
▶ 育成のために整えるべきこと
丸投げでは機能しません。弊社が支援する際は、以下を並行して整備します。
✅ 判断基準の明文化:どこまでを相談員判断とし、どこから医師に相談するかの線引きを文書化する
✅ 医師・看護部門との事前合意:受入範囲について事前に握っておく
✅ 迷ったときの相談ルートの確保:即日で医師に確認できる体制をつくる
✅ 判断結果の振り返り:受け入れた/断ったケースを月次で検証し、判断精度を上げる
会議をなくすのではなく、「会議の機能を、より速い意思決定プロセスに移す」ということです。
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🔴 稼働率向上が「給与」に直結する時代です
2022年当時より重要度が増しているポイントをお伝えします。
処遇改善加算は2024年6月に介護職員等処遇改善加算へ一本化されました。そして令和8年度の介護報酬改定率+2.03%のうち、+1.95%が処遇改善関連です。
制度は「賃上げの原資は増やすが、事業運営の原資は増やさない」方向へ進んでいます。加算への依存度が上がるということは、稼働率の差がそのまま給与の差になるということです。
2025年度介護労働実態調査では、人材不足を訴える事業所は65.8%。そして採用に最も効果があった方策は「賃金水準の向上」(38.4%)でした。
入所判定会議の撤廃によって稼働率が上がれば、それは職員の給与になり、採用力になります。
この構造を職員に伝えることが、撤廃への抵抗を減らす最大の説得材料になります。
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🔴 常識にとらわれていては、荒波は越えられません
「薬価の上限基準の撤廃」と同様、「入所判定会議の撤廃」は本当に難しいことです。
並大抵の努力では成し得ません。聞く人が聞けば、非常識だと思われるかもしれません。
しかし、介護を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。老健の3施設に1施設が赤字。介護事業者の倒産は2年連続で過去最多。物価高騰と人材難は続き、2027年度には介護報酬改定と制度改正が重なるダブル改定を迎えます。
常識にとらわれていては、これからの荒波は乗り越えられません。
非常識なことだからこそ、逆に必要なのかもしれません。
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まとめ:本気で稼働率を上げたいなら
✅ 老健の30.5%が赤字。入所利用率と事業利益率はほぼ同じ推移
✅ 入所判定会議は週1〜2回開催が多く、退院日に間に合わない
✅ 老健への申し込みの7〜8割は病院から——スピードが命
✅ 断り続けると紹介ルートそのものが細る
✅ 介護保険上、誰でも受け入れるなら入所判定会議は不要(運営指導クリア実績あり)
✅ 定期判定会議(3ヵ月に1回)とは別物。混同に注意
✅ 撤廃後の判断は支援相談員へ——育成と基準の明文化がセット
前回の「薬価の上限基準の撤廃」と、今回の「入所判定会議の撤廃」。この2つが実行できれば、稼働率は劇的に変わります。
本気で稼働率を上げたいなら、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
「稼働率が上がらない」「社内を説得できない」「支援相談員をどう育てればいいかわからない」——そのような課題を抱えている法人は、ぜひ一度ご相談ください。初回相談は無料です。
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株式会社Ne-worth(ニューワース)
代表取締役 森中 洋(もりなか よう)
社会福祉士 / 老健・特養・地域密着型特養にて支援相談員・企画広報部長・事務長を歴任後、独立。現在15法人のコンサル・顧問に従事。
対応施設種別:介護老人保健施設・特養・住宅型有料老人ホーム・グループホーム・サービス付き高齢者向け住宅・訪問介護・訪問看護・障がい事業(共同生活援助・就労継続支援B型)
📧 メール:morinakayou0028@gmail.com
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